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「高山くん」

 高山がその声に目を開けると教室の中は蛍光灯の光で照らされていた。窓の外をみると夕日が沈み、空には星が輝いていた。

「寝てた?」
「うん。椅子に座ったままバランスよく」

 時計を見ると十九時を過ぎていた。もう校舎が閉められる時間だ。

「見回りの先生がさっき来たから」
「ああ、帰らないと」

 高山は大きく伸びをすると立ち上がる。折原も立ち上がり、帰り支度を終えた鞄を持つ。

「起こせばよかったのに」
「起こしたほうがよかった?」
「俺は構わないよ。折原が帰れなかっただろ? 放って帰ればよかったのに」
「私が帰りたくないと思ったから」

 折原は自分が言われたように高山に返す。高山は苦笑する。

「手紙は書き終わった?」
「今日のはね」
「死ぬ日が来るまで書き終わらないってことか」

 今日の? とは高山は訊き返さなかった。訊き返したら、返ってくるだろう答えを想像して言うと折原は不思議そうに高山を見る。

「違った?」
「間違ってはない」
「そっか」
「ねえ、高山くん……」

 折原は何かを言いかけて、小さく首を横に振る。やっぱりやめておこう。折原が言葉にしなくても高山にはその仕草だけで伝わった。


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