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「死んだときのための手紙?」
「そう、死んだときのための」
「遺書ってこと?」

 折原は静かに首を横に振る。

「違う。死んだ私からの手紙よ」
「それを遺書と呼ぶのでは?」
「遺書って言うと堅苦しい気がするから」
「死ぬの?」
「死ぬわよ」

 高山の問いに折原は迷わずに答える。そんな折原に高山は言葉を失いそうになる。

「……どうして?」
「生きているんだから、いつかは死ぬ。そのいつかがわからないから死んだときのために手紙を書いておくのよ」
「ああ、俺はてっきり……」
「そのつもりだったら私は高山くんとこんな会話しない」
「そうか?」
「そうだよ」
「俺なんか死んだときのためとか考えたことない」
「世の中何が起きるか、わからないから」
「そうだな……」

 会話が止まると折原は手紙の続きを書き始めた。窓から入る夕日の光で室内はオレンジ色に染まっていた。いつもはにぎやかな教室の中は二人の呼吸の音と折原が文字を綴る音しかなかった。普段は気にしない音がやたらに大きく聴こえる。だけど、それが嫌に心地よかった。


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