(6/10)

俺はすぐには町長のところへ行かなかった。

日が経つに連れてネズミ騒動は酷くなるばかりだった。それを見かねて、俺は町長の元へ行くことにする。本当にネズミを追い出すことができるかはわからないが。

「町長」
「ラナじゃないか」
「町長、俺がネズミを追い出せたら賞金くれますか?」
「ああ、やろう」
「千ギルダー?」
「ああ、本当に追い出せた時にやろうじゃないか」
「その言葉に嘘はないですよね? 約束ですよ」
「ああ」
「じゃ、見ていてください。あ、今日だけブンゲンローゼンジュトラッセで楽器を鳴らすことを許してもらえますか?」
「いいだろう」

俺はにっと笑ってからブンゲンローゼンジュトラッセに向かう。そして笛吹き男に渡された笛を取り出し、口にくわえる。

「笛! 何でラナが!」
「ラナは何をしようとしているんだ?」

俺のことを見て、大人たちが声をあげる。俺は気にせずに笛に息を吹き込んだ。俺の指は自然と動き、曲を奏でる。それは十二年前、笛吹き男がネズミを追い出したのと同じ曲。ネズミたちは水路に向かって大行進。次々に水の中へ飛び込む。

俺はネズミを町から追い出した。

「町長、約束です」
「ラナおまえは、笛吹き男の手先になったのか!?」
「は? 何のことですか? 俺は誰の手先でもありません」
「何を言うか、ラナが吹いた曲は十二年前、笛吹き男が吹いた曲と一緒じゃないか!」
「それがなんなんですか? 俺には関係ありません。ネズミを追い出したのだからいいでしょう?」
「笛吹き男と繋がるおまえは町の裏切り者だ。出て行け……いや、こいつを捕らえろ。牢屋にぶち込め」
「は?」

俺には訳がわからなかった。何で俺が牢屋にぶち込まれないといけないんだ?ただネズミを追い出しただけじゃないか。町長はあの日から変わったのだとばかり思っていた。だけど変わっていない。俺に賞金を与えずに牢屋にぶち込もうなんて……

信じられない。


次へ→

←前へ

mainへ