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「バカらしいな……」

こんなことを毎日のように考えている俺は何なのだろうか。町の大人たちを恨んでいるのだろうか、楽しく暮らしているだろう皆を妬んでいるのだろうか。どっちにしろ俺はその出来事を忘れてしまっては駄目なんだ。
いや、忘れることなんてできない。

「仕事に行こう……」

俺はベッドから体を起こし、箪笥から着替えを取り出す。ガサッと音が箪笥の中でしたので見る。

「ネズミ……?」

そこにはネズミがいた。十二年前、ハーメルンの町からネズミは消えたはずなのに戻ってきた。
昨日まで全く見かけなかったのになぜ突然……?
ネズミは俺の視線に気が付いたのかさっと衣服の中に姿を隠した。俺は引き出しをひっくり返し、ネズミを追い出す。一匹だけかと思えば三匹もいた。ネズミがいたことのショックよりも衣服がかじられていたことにショックを受けた。穴を塞がないといけない。面倒だ。


町からいくつもの悲鳴が聞こえた。俺は何かと思い窓から町の様子を見る。前の通りをネズミが走っている。ざっと数えて十匹ぐらい。俺は十二年前の光景を思い出す。

毎日のようにネズミが騒動を起こし、町の人たちは苦悩していた。食糧をかじられ、家の壁に穴を開けられ、足や手をかじられた。休まることの無いネズミの騒動。何となくその騒ぎが懐かしかった。

「ラナ、大変よ。ネズミが……」
「俺の部屋にもいたよ。ネズミを見たのは十二年ぶりだよ」

そんなのん気なことを言いながら朝食の席に座る。俺のパンをネズミがかじっている。俺は手でネズミを追い払いパンを口に入れる。別にネズミがかじろうが気にしない。十二年前まではそうだったのだから。朝食を食べる俺の前で母がネズミを追い払っていた。

「昨日まで見かけなかったのに何で」
「ネズミが大群で押し寄せてきたみたいだね……ご馳走様でした」
「はい。気をつけていっているのよ」
「今日は仕事になりそうにないね。だって、町はネズミの出現で大騒ぎ」
「そうね」
「いってきます」
「いってらっしゃい」

俺は家を出る。出たとたんにネズミと鉢合わせる。俺は足でネズミを追い払い仕事場へ向かう。仕事場は近所のパン屋。きっとネズミのおかげで仕事にはならないだろう。


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