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「落ち着いた?」
「ん……」

ずずっと音を立てて鼻をすすって姉は頷いた。

「光哉がね、私のこと好きだって言ってね、出会う運命だったんだって言ってたのよ」

さっきもそんなこと言っていたなと思いながら、姉の言葉に相槌を打つ。姉はゆっくりと話を進めていく。ありがたい、早口で言われれば理解が困難だ。

「私も出会う運命だったんだって信じてね、本当に好きになったの、大好きだったの」

姉の『光哉』という人への気持ちが表情と声色からよくわかった。姉は好きになった人はたくさんいるが、一人一人本当に好きだったのだ。だから、別れるたびに大泣きして周囲を困らせる。

「この人は運命の相手、これ以上の人はいない。この人以外愛せない……何て思ったことある?」
「……ない」

姉に唐突に質問されるが文句を言わずに答える。ないに決まってる、私は姉のように大恋愛はしたことないのだから。

「私はあるんだ……恋をするたびに思ってる。私にはこの人だけ、この人だけしかいない。この人がいないと生きていけない……」

姉は一途だ。真っ直ぐで真っ直ぐすぎて、たくさん傷ついてきた。考えれば姉は自分から恋人をふったことはないのだ。必ずふられて泣き顔で私の部屋へ来る。私はそれをわかっていても冷たくあたってしまう。親身に考えようとはしない。恋愛経験のある姉とない私。一緒に悩むことなんてできない。だから軽くあしらってしまうのだ。いや、そうすることしかできないのだ。私には姉の話を気が済むまで聞いてやることしかできない。

役立たずだ。

「……だけど、そんな感情は一時のこと……だって次好きな人ができたらその人にも思うんだよ。自分はいい加減だと思うよ」
 
姉は笑った。泣き顔で笑った。それが私を切なくさせて泣きそうになった。だけど私は泣けない。姉と一緒に泣いてあげることはしない。だってそれは姉に失礼だと思うから。妹に同情されてしまえばもっと悲しくなるだろう。誰か他の人が一緒に泣いてあげればいいのだ。私じゃない。

「運命って感じてもね、所詮それは運命じゃないのよ……」

姉の言っていることは難しい。私が姉に言う言葉よりも遥かに難しいのだ。姉がそう感じていなくても。

「運命なんてありえないのよ」

姉は再び大きな瞳から涙を零し始めた。


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