(6/6) 「わからないよ」 「たとえ開けたとしてもそれでいい」 「開けないと思うから、俺に渡そうとしてるんだろ?」 「開けるか開けないか、そんなの私にはわからない。けど開けないかもしれないから渡そうと思った」 「もしかしたら俺が開ける日が来るかもしれない」 「それは来るかもしれないわ。私が高山くんよりも先に死んだら」 「開けないかもしれないよ?」 「それは高山くんが選ぶことだから。今、この手紙を受け取るか、受け取らないか選ぶのも高山くん」 「でも、まだ書き終えてないんだろ?」 「もしかしたら次の瞬間死ぬかもしれないでしょ?」 確かに。高山はそう思いながら折原から手紙を受け取る。適当な気持ちで受け取るわけではない。もし次の瞬間、折原が死んでしまったら。 そのときに自分は手紙を受け取らなかったことを後悔するかもしれない。受け取ったことを後悔する場合もあるかもしれないが。 「俺が次の瞬間死ぬかもしれないけどな」 高山は折原の手紙を上着の内ポケットへ入れる。上着の上から布越しに手紙が入っていることを確認する。絶対に失くしてはいけない。そう肝に銘じる。 「高山くん」 「ん?」 「ありがとう」 いつも無表情なことが嘘に思えるくらい、折原は優しく微笑んだ。月明かりに照らされた表情はすぐに戻る。どうせならばもっと明るいところで見てみたかったと高山は思った。 「帰ろうか」 折原は黙って頷く。二人はゆっくりと廊下を進んだ。 高山は再び制服の布越しに折原から受け取った手紙を確認する。右胸に左手を置いて、手紙の存在を感じた。そして、いつまでも開ける日が来ないことを祈った。 この手紙が、死んだ彼女からの手紙にならないように。 end コメントへ→ ←前へ mainへ