(10/10)

そこはキレイな場所だった。
見たことのない色とりどりの花。
熟した実のなる木。珍しい動物。
透き通った水のはる湖。
そしてたくさんの子供たち。

「サユ、カロ、ラーン……」

知った顔がたくさんあった。十二年前いなくなったときの姿のまま皆がいた。

「どうして皆そのままなんだ……?」
「ここでは一日は経っていないんだよ」
「どういうことだ?」
「僕の楽園では時間はない。外で何年、何十年経とうがここでは時間が経たない。動いていても何していても時間は経たない」
「よくわからないけど……一生楽しく暮らせるわけか」
「ああ、死ぬことなくな。少し経てばすぐに時間感覚などなくなるだろう」
「俺、もう十八だよ。子供の時に来ていたらな……」
「ラナー、遊ぼうよ」
「ラナ?」
「ラナだ! どこ行ってたんだよ」
「ラナ、足よくなったの? よかった! 皆でかけっこできるね」
「早く来いよ、楽しいよ」

昔の友達は俺に向かって微笑んだ。俺は涙を堪える。
嬉しかった。
温かかった。
こんな気持ちずっと忘れていたよ。

「何で、皆は俺が成長していても気にしないんだ?」
「姿形は関係ないんだよ。ここで重要なのは精神の方だ。精神がラナなら皆はラナと認識した」
「……よくわからないよ。あんたの楽園は難しいことばかりだ」
「それもいつかは気にならなくなるよ。ほら、皆呼んでる。十二年分の寂しさを忘れるように楽しんでおいで」
「ああ」

俺は自分の半分ぐらいしか身長のない子供に混じり遊んだ。楽しかった。子供だと言われても構わない。皆と楽しく過ごせるのなら。



***

ハーメルンの町では子供たちが再び消えたことで大混乱だ。牢屋からラナがいなくなったことで犯人はラナだと言い、ラナの母親は町民たちに攻められた。


「あなたたちが十二年前と同じことを繰り返したからです。ネズミを追い出したラナを牢屋に閉じ込めて、それでラナが怒るのも当たり前。あなたたちは笛吹き男にやったことよりもラナに酷いことをした。当然の報いです。」


再びハーメルンの町を襲った悲劇。嘆き悲しむ大人たちの姿がそこにあった。


end


*コメント*
2006年7月作成。テーマ「童話」だった。
高校の図書館で絵本のコーナーから一冊選んだのが「ハーメルンの笛吹き」
昔、実際にあった事件が題材になっている…とか、あとがきに書いてあったような。

2010/11/23
←前へ mainへ