(1/2) ある冬の1日、僕はソレに出会った。 雪が深々と降る中、ソレはそこに立っていた。 足をしっかり地面に張ってそこにいた。 ソレとボク 僕は毎日同じように繰り返している日々に嫌気がさし、その日々から逃げ出そうとしていた。 その日、生まれて初めて学校をサボった。ボクは妙に胸が高鳴っていた。 見回りをしている先生がいると生徒の間で噂されていた。その先生に見つかったらどうしよう……見つかって生活指導室でみっちり叱られ、反省文を原稿用10枚分書かされたりしたら…… けれども、それはそれで繰り返される毎日に終止符を打つことになる。悪さして、先生に捕まってみるのも良い経験かもしれない。でも反省文とかは嫌だな。 いつもと同じ町並みも学校をサボって見るとなぜか違うように感じる。 こんなに空は高かっただろうか、こんなに空気は美味しかっただろうか。今まで曇っていた視界が晴れたようだった。 いつもと違って、世界が広く感じられた。 しかし、季節は冬。今日の最高気温は8度、今にも雪が降りそうだ。呼吸するたびに口から白い息が出る。学生服にマフラーを巻いているだけで、他の防寒するための物は身につけていない。手はズボンのポケットに突っ込んで暖を取っていた。外気に触れる顔の皮膚は風が吹く度に悲鳴を上げていた。なるべく風が当たらないよう、マフラーに顔を埋めたりもしたが、やはり寒い。 観念して顔を上げて降り出した雪を見る。 (虫みてえ……) そんなロマンの欠片もないことを思ったりする。手で雪を掴んでみても、すぐに溶けてしまう。何だか寂しさを感じる。 道に積もり始めた雪を踏めば、しゃりしゃりという音が立つ。足の裏に何とも言えない感触が残る。坂道を上るときは滑らないように足元に注意を払った。ギャグみたいなこけかたは避けたい。 そんなことを思っていると、いつの間にか坂を上り切っていた。 目の前が開けたと思うと、僕の目にソレが留まった。雪のせいで少しぼやけて見えたけど、すぐにソレが何かと判断した。 僕はソレに吸い寄せられるように近づいて行った。近づいてみると、ソレは僕とほとんど変わらない背の高さで、顔を俯いて、頭に雪を積もらせている。 吹く風に少し揺られながら、そこに立っていた。僕はソレの前に立ち止まる。どうして、そこにいるのか理解できなかった。 季節は冬、低い気温に、天から降る雪。ソレがそこにいるのは似合わない。いや、似合わないと言うか見慣れない。かなり不可思議な光景ではある。 「寒くないの?」 僕はソレに問いかけた。ソレは黙って、そこに立っている。 雪が吹雪いてきた。気温もさっきよりも下がったような気がする。 寒空の下、こんなところに立っていれば寒いだろう。しかし、ソレは僕の問いには答えてくれなかった。僕はソレの横に腰掛けて、ソレの顔を見上げた。吹雪く雪に耐えようと、ぴんと背を伸ばして、顔を俯いている。 次へ→ mainへ