(1/2) 幸せになりたいと願った少年がいた。 幸せを探していた。 一生懸命、探していた。 ぼくのしあわせ 「ぼくは幸せになりたい」 願いを叶えてくれるという店の主人に少年は言った。 「幸せに?」 「ぼくは幸せになりたいんだ」 少年は真っ直ぐ店の主人を見た。 店の主人は微笑むと少年に尋ねた。 「きみは今、幸せではないのかい?」 少年は答えずに下を向く。 「それもわからずにきみは幸せを求めているのかい?」 店の主人はまた尋ねた。 少年はすぐには答えない。 「幸せなんかじゃないよ」 「どうしてそう言いきれるのかい?」 「……幸せなんかじゃ」 「きみの言う幸せって何なのかな?」 少年は店の主人を見る。 店の主人は少年を見ずに手元にある本に目を落としていた。 「聞いてるの?」 「聞いてるよ。だから、きみの思う幸せについて聞かせてくれ」 少年は再び口ごもる。 店の主人はそっと本をたたむと少年を見た。 「きみの幸せが何なのかもわからないのに、きみは幸せを求めるんだね」 「わからないから……幸せになりたいんだ」 「きみの幸せの意味さえわからないようだと、幸せだとしても気づかないまま終わってしまうね」 少年は下唇を噛み締めて店の主人を見ていた。 次へ→ mainへ