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幸せになりたいと願った少年がいた。

幸せを探していた。

一生懸命、探していた。


ぼくのしあわせ


「ぼくは幸せになりたい」

願いを叶えてくれるという店の主人に少年は言った。

「幸せに?」
「ぼくは幸せになりたいんだ」

少年は真っ直ぐ店の主人を見た。
店の主人は微笑むと少年に尋ねた。

「きみは今、幸せではないのかい?」

少年は答えずに下を向く。

「それもわからずにきみは幸せを求めているのかい?」

店の主人はまた尋ねた。
少年はすぐには答えない。

「幸せなんかじゃないよ」
「どうしてそう言いきれるのかい?」
「……幸せなんかじゃ」
「きみの言う幸せって何なのかな?」

少年は店の主人を見る。
店の主人は少年を見ずに手元にある本に目を落としていた。

「聞いてるの?」
「聞いてるよ。だから、きみの思う幸せについて聞かせてくれ」

少年は再び口ごもる。
店の主人はそっと本をたたむと少年を見た。

「きみの幸せが何なのかもわからないのに、きみは幸せを求めるんだね」
「わからないから……幸せになりたいんだ」
「きみの幸せの意味さえわからないようだと、幸せだとしても気づかないまま終わってしまうね」

少年は下唇を噛み締めて店の主人を見ていた。


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