(2/2) 「あ……」 小さく声をあげると彼女の顔は紅潮した。僕は彼女を見つめた。彼女は顔をそむける。 「あなたには尊敬とか友情とかそういった感情を持っていたのに……それをどこにやったかわからなくなった」 「それってさ……」 「大切だったんだよ。あなたへの気持ち。それなのに他の気持ちが上回って、どこにやったのかわからなくなった。好きすぎて、愛しすぎて、あなたにどう関わっていいのかわからなくなった。だから、元の気持ちになろうと思ったんだよ」 彼女がまず失くしたのは“普通”と言うものかもしれない。普通とは何かと説明しろと言われても困るけど。 僕がおかしくて笑うと彼女は頬を膨らませた。 「笑わないでよ。私にとって重要なことなのに」 「別に元の気持ちを探さなくていいんじゃない?」 彼女は首を傾げる。 「きっとさ、失くしたわけじゃないよ。気持ちが成長しただけ。それだけだよ」 「私は失せ物ばかりだから、失くしたものだと思ってたんだけど。探し方がわかっていたほうが、今の気持ちを失くしたときに困らないのに」 それは僕に対する恋愛感情が失われるかもしれないということだろうか。気持ちなんてそんなものかもしれない。 それでも今、彼女と僕の気持ちが同じことが嬉しかった。 「君が失くしたら、僕が探してあげるよ。だから、今までどおり僕の傍にいればいいと思うよ」 「あなたは失せ物探しの天才だもんね。それなら、ずっと安心だ」 彼女は嬉しそうに笑った。 君が僕への今の気持ちをいつ失くしてしまうかわからない。失くしてしまったその時は僕が探すよ。僕が絶対見つけてあげるから。 だから、ずっと傍にいて。 僕は彼女に応えて微笑んだ。 end
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